忘れちゃいけない火山のはなし:火山噴火は人類にとって大きな脅威

噴火している火山の前に立つ人 災害

アイスランドのはなし

つい先日の2023年12月18日にアイスランドの南西部レイキャネス半島にある火山が噴火し、溶岩と煙が噴出した。付近の町グリンダヴィークでは数週間前から地震活動に伴う地震が頻発し、空気中の二酸化硫黄の濃度が上昇していたため、既に付近の住民は避難しており、近隣の有名な地熱温泉施設「ブルーラグーン」も閉鎖されている。地面の亀裂から激しく吹き上がるマグマの映像も恐ろしいが、町中の舗装された道路が突然陥没していたり、割れていたりして、そこから白い蒸気のような煙りが立ち上っている映像もなかなかショッキングだ。アイスランド政府は「噴火は人命を脅かすものではない」と説明しているが、住んでいた町は元通りになるのだろうか。

レイキャネス半島の地域では、2021年3月19日にもファグラダルスフィヤル火山が約800年ぶりに噴火している。また2010年4月のエイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火では、数キロメートル上空まで火山灰が噴き上がり拡散した。その為、ヨーロッパの大部分の空域が閉鎖を余儀なくされ、大きな航空混乱をもたらした。

火山災害の恐ろしさ 

私たち人類にとって、おそらく噴火を含めた火山災害が一番恐ろしい自然災害ではないでしょうか。火山とは、地下深くにあるマグマが地表や海底に表れてできる地形のことです。火山の下に溜まっているマグマが上昇してきて地表に出る現象を噴火と言います。火山が噴火するとさまざまな災害が引き起こされます。

溶岩流

溶岩流とは、地下のマグマが火山の噴火によって地表に流れ出る現象。溶けた岩石の成分により粘度は様々だが、概ね進むスピードは遅め。1000℃を超える高温のため、到達したエリアは焼き尽くされることになる。避難は比較的容易で、冷えて固まった後に独特の地形を残すため希少な観光資源になる場合もある。

噴石

噴石は、火山活動に伴って噴出される岩の塊や岩石片などのことを指します。噴火時に火口から高速で飛散することもあり、周囲には大変な危険をもたらします。風に流されて10Km以上飛ぶ「火山れき」と呼ばれる小さなものから、加工の周囲2~4Kmほどの距離に飛散する火山弾(64mm以上)や、数メートル以上と巨大なものまで、噴火の威力によりサイズと到達地点が変わります。2014年の御岳山の噴火では、多くの登山者が雨のように降り注ぐ火山弾や、近くに落ちて跳ね返ったり飛び散ったものにより致命傷や重傷を負ったとされる。

火砕流

火砕流とは、火山砕屑物(火山から噴出された固形物のうち、溶岩以外のものの総称)と水蒸気や火山ガスが混ざり合った数百度以上の高温の流れが高速で山腹を下り下りていく現象です。温度はマグマに近い高温のものから、100℃程度のものまで幅があります。似たような現象で、砕屑物の割合が低く、ガスの割合が多い火砕サージというものもある。
火砕流が恐ろしいのは、その「スピード」。1991年、長崎県の雲仙・普賢岳の噴火で頻発した火砕流は、およそ700℃の高熱を持ち、時速80キロ以上で斜面を流れました。この年、43人が犠牲となった。

火山灰

火山が噴火した時にふきだされる直径2mm以下のものを火山灰と言います。物質としては、ガラス質や鉱物結晶、岩石の破片だったりと様々だが、いわゆる燃えカスの灰とは別物。細かく軽いため噴火の際に一部は成層圏まで飛ばされて気候に影響を与えることもある。人間の生活圏内に降ってきた場合は、人体や生活環境に大きな悪影響を及ぼす。

火山ガス

火山の火口や噴気孔から噴出する気体のこと。主成分は水蒸気や二酸化炭素だが、有毒な成分を含んでいる場合もあり、噴出時は数百℃以上の場合が多い。空気よりも密度が高いため窪地にたまりやすく、うっかりそこへ入った動物や人間がその場で死んでしまうこともあるので大変危険だ。
日本の場合、噴火はしなくても恒常的にガスのみ噴出している火山は多い。
激しい噴火がおさまった後に、火山がガスを噴き出し続けることもあります。2000年8月、三宅島では、この火山ガスが季節風に流され、集落まで到達。住民は4年半もの間、避難生活を余儀なくされました。

融雪型火山泥流

噴火が雪山で起きたときには、さらなる警戒が必要です。溶岩の熱で積もった雪が一気に溶けて、泥流が洪水のように流れ下ることがある。これは融雪型火山泥流といわれる現象です。予測が難しく、発生から短時間で居住地域まで到達する可能性があり、発生の可能性がある場合は素早い避難が求められる。1928年、北海道・十勝岳で発生した際には、144人もの死者・行方不明者を出しました。

空振

火山が爆発的な噴火を起こした時の急激な気圧変化によって空気が振動し、衝撃波となって空気中を伝播する現象。建物の窓や壁を揺らし、窓ガラスが破損するなどの被害が発生することもある。
2011年、鹿児島県の新燃岳 (しんもえだけ)の噴火では、大気の振動が数キロ先のガラスを割りました。ガラス片によるけが人も出ています。また2022年のフンガ・トンガ噴火では津波を引き起こし、地球を一周したとされる2度の気圧変化が観測された。

スーパーボルケーノが引き起こす破局噴火:鬼界アカホヤ噴火、イエローストーン

火山噴火の中でもスーパーボルケーノ(Supervolcano)による壊滅的な噴火を破局噴火という。噴火後に大きなカルデラを形成することからカルデラ噴火と呼ばれることもあり、地球規模の環境変化や大量絶滅の原因ともなりうるとんでもない規模の火山爆発だ。

火山噴火の規模を表す数値に火山爆発指数=VEI(Volcanic Explosivity Index)というものがあり、噴出物の量で0から8に区分される。※火山爆発指数(VEI)について詳しくはこちらを参照いただきたい。破局噴火の定義ははっきりとは決まっていないが、概ねVEI=7から8に相当し、だいたい1万年に1度クラスの巨大災害となる。
日本でも過去に起きており、有名なのが7300年前に鹿児島県南方海域の鬼界カルデラで発生したVEI=7の「鬼界アカホヤ噴火」。縄文時代に南九州で起きた大噴火で九州南部の縄文文化を壊滅させ、大量の火山灰で森林も破壊し、回復には数百年かかったとされる。
ちなみに1990年から1995年にかけて噴火を繰り返していた雲仙普賢岳の1回あたりの噴出量ではVEI=0、約5年間の総量でおよそVEI=3~4程度だ。それと比べると鬼界アカホヤ噴火は数千倍の規模にもなる。
その破局噴火の可能性が現在高まっている箇所がある。米国北西部のイエローストーンだ。イエローストーンは過去にも何度かカルデラ噴火を引き起こしており、現在、世界最大級のマグマだまりがあるとされる。60~70万年毎と言われている周期にも入っており、いずれ巨大噴火が起こると予想されている。今のところ噴火が差し迫っているようなデータはないらしいが。
もしも破局噴火が起きた場合、半径1000キロメートル以内の90%の人が火山灰で窒息死し、3~4日ほどでヨーロッパまで大量の火山灰が降り注ぐ。地球の平均気温は最大10度下がり、氷河期のような期間が6年から10年ほど続くとされている。世界中の農作物への影響は避けられず、人類存亡の危機となる可能性が高いだろう。イエローストーン国立公園は世界有数の観光スポットだが、その事実を知ってしまうとおいそれと訪れることを躊躇してしまう。

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